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法人でも農地は買える?農地所有適格法人・貸借による企業参入の仕組みを解説

  • 執筆者の写真: MIRAIU
    MIRAIU
  • 8月25日
  • 読了時間: 16分

会社で農業へ参入したい。

農地を購入して、自社農園を始めたい。

食品会社や建設会社など、農業以外の会社が新規事業として農業を検討するケースもあります。

そこで気になるのが、

「株式会社や合同会社でも農地を買えるのか?」

という問題です。

結論から言えば、法人でも農地を所有することはできます。

ただし、普通の会社が事業用地を買う感覚で自由に農地を購入できるわけではありません。

農地を所有する法人には、農地法上の「農地所有適格法人」の要件があります。

一方で重要なのが、農地を所有しなくても、借りることで一般法人が農業へ参入できることです。

2009年の農地法改正以降、一定の条件を満たせば、農地所有適格法人ではない一般法人でも全国で農地を借りて農業へ参入できる仕組みになっています。

この記事では、

・法人が農地を所有する条件

・農地所有適格法人の4つの要件

・一般企業が農地を借りる仕組み

・株式会社や合同会社でも参入できるのか

・購入とリースのどちらから始めるか

を整理します。

▪️結論|「農業参入」と「農地所有」は分けて考える

法人の農業参入で最初に整理したいのはここです。

農地を所有して農業をする

農地所有適格法人の要件を満たす必要があります。

農地を借りて農業をする

農地所有適格法人ではない一般法人でも、一定の要件を満たせば参入できます。

つまり、

「農地を買えない会社は農業へ参入できない」

という仕組みではありません。

むしろ新規事業として農業を始める段階では、最初から農地を所有せず、貸借から始める選択肢があります。

農業をするために、本当に土地を所有する必要があるのか。

ここから考えることが重要です。

▪️法人が農地を所有するには「農地所有適格法人」になる

農地所有適格法人とは、農地法に定められた要件を満たし、農地を所有できる法人です。

特別な法人を一から設立しなければならない、という意味ではありません。

対象となる法人形態には、

・株式会社。ただし公開会社ではないもの

・農事組合法人

・合同会社

・合名会社

・合資会社

があります。

つまり、一般的な株式会社や合同会社でも、これから説明する要件を満たせば農地所有適格法人になり得ます。

一方、

株式会社を作った。

会社の定款に農業を追加した。

これだけで農地を購入できるわけではありません。

農地を所有するためには、法人形態・事業・議決権・役員という4つの要件を確認します。

詳しくはこちら

▪️要件① 法人形態|どんな会社でも所有できるわけではない

まず法人の形です。

農地所有適格法人になれる代表的な法人は、

・非公開会社である株式会社

・合同会社などの持分会社

・農事組合法人

です。

ここでいう「非公開会社」とは、株式を自由に譲渡できる公開会社ではなく、株式譲渡について会社の承認が必要となる会社です。

つまり、

「株式会社だから農地を買えない」

わけではありません。

普通の中小企業で多い株式譲渡制限会社も対象になり得ます。

ただし法人形態を満たしただけでは、まだ農地を所有できる条件は完成しません。

▪️要件② 会社の主な事業が農業であること

次が事業要件です。

農地所有適格法人では、主たる事業が農業である必要があります。

判断では、農業と農業に関連する事業の売上高が法人全体の売上高の過半であることが基本になります。

農業関連事業には、自社で生産した農産物について、

・加工する

・貯蔵する

・運搬する

・販売する

といった事業などが含まれます。

例えば食品会社が新しく農業部門を作ったとしても、

本業売上 9億円

農業関係売上 1億円

という状態なら、単純に農業部門を持っただけで農地所有適格法人の事業要件を満たすとは考えられません。

ここが**「企業が農業へ参入できる」ことと「企業が農地を所有できる」ことの大きな違い**です。

▪️要件③ 農業関係者が議決権の過半を持つ

農地所有適格法人には議決権についても要件があります。

原則として、農業関係者が総議決権の過半を占める必要があります。

農業関係者には、

・法人の農業へ常時従事する個人

・法人へ農地の権利を提供した個人

・一定の関係を持つ農業者

などが含まれます。

つまり大企業が農業会社を作って、

親会社が100%議決権を持つ。

現場だけ農業従事者へ任せる。

という形では、原則的な農地所有適格法人の議決権要件と合わない場合があります。

農地所有には、実際に農業へ関わる人が経営にも関与する仕組みが求められています。

▪️要件④ 役員にも農業への実際の関与が必要

経営陣についても条件があります。

原則として、

・役員の過半が法人の農業へ常時従事する構成員

・役員または重要な使用人のうち1人以上が必要な農作業へ従事

することが必要です。

常時従事については原則年間150日以上、必要な農作業への従事については原則年間60日以上という考え方が示されています。

つまり、

土地だけ会社名義で取得する。

農作業はすべて外部へ任せる。

役員は農業経営にほぼ関わらない。

という形で農地を所有する制度ではありません。

農地所有適格法人は、会社自身が農業経営の主体となることが前提です。

▪️4つの要件を簡単に整理するとこうなる

農地を所有したい法人は、まず次の4点を確認します。

・法人形態が対象になっている

・農業・関連事業の売上が過半を占める

・農業関係者が議決権の過半を持つ

・役員等が実際に農業へ従事する

この4つを満たしたうえで、農地法3条などによる農地取得の手続きを進めます。

法人名義だから特別に自由に取得できるわけではありません。

個人の場合と同様に、取得後に農地を適切に利用できるか、周辺農地へ支障を与えないかといった基本的な要件も確認されます。

詳しくはこちら

▪️一般企業なら「買う」より「借りる」方が参入しやすい

ここからが企業参入で非常に重要な部分です。

農地所有適格法人の4要件を満たしていなくても、一般法人が農地を借りて農業へ参入することは可能です。

2009年12月に施行された改正農地法によって、貸借であれば一般法人も一定の要件のもと全国で農業参入できる仕組みが整備されました。

つまり、

建設会社。

食品会社。

IT企業。

小売会社。

などが、本業を続けながら農業へ参入する場合でも、最初から農地所有適格法人へ会社全体を変える必要はありません。

農地を借りて農業事業を始める方法があります。

▪️一般法人のリース参入は実際に5,000法人を超えている

企業による農業参入は、制度上可能というだけではありません。

農林水産省の統計では、農地をリースする方式で農業へ参入した一般法人は、2025年1月1日時点で5,037法人となっています。

前年の4,544法人から約10.8%増えています。

農業参入というと、

農家が法人化する。

農業法人を新設する。

という形だけを想像しがちです。

しかし実際には、農業以外を本業とする法人が貸借によって農業へ参入する仕組みも利用されています。

「農地を所有できない=企業参入できない」ではありません。

▪️一般法人が借りる場合にも3つの重要条件がある

もちろん、普通の会社なら無条件で農地を借りられるわけではありません。

解除条件付き貸借による参入では、主に次のような条件を確認します。

・農地を適正に利用しない場合に契約を解除できること

・地域の農業で適切な役割を果たし、継続的・安定的に農業経営を行うこと

・業務執行役員または重要な使用人の1人以上が農業へ常時従事すること

ここでいう農業への従事は、すべての時間を畑で農作業するという意味だけではありません。

農業経営や企画・マーケティングなどへの関与も含めて判断される仕組みがあります。

所有する場合に比べれば、法人の株主構成や売上構成に関する制約を受けず参入しやすいのが特徴です。

▪️なぜ「適正利用しなければ解除」という条件がある?

一般法人の貸借で特徴的なのが解除条件です。

例えば会社が農地を借りたものの、

事業から撤退した。

耕作しなくなった。

農地を荒らした。

という状態で長期間契約だけ残れば、農地を次の担い手へ渡しにくくなります。

そこで適正な農業利用を行わなくなった場合には、貸借を解除できる条件を契約へ入れます。

一般法人に農地を利用する機会を広げながら、農地そのものを守る仕組みです。

つまりリース参入は、

普通の土地を借りるだけ。

ではなく、農業利用を続けることを前提とした貸借です。

▪️企業参入では地域との関係も軽視できない

会社として数字が合えば農業を始められる。

それだけでもありません。

農地では、

農道。

用水路。

排水路。

共同作業。

地域の話し合い。

など、周辺農業者と関係する場面があります。

企業参入の制度でも、地域における適切な役割分担のもとで継続的・安定的に農業経営を行うことが求められています。

例えば用水路の維持管理など、地域農業を続けるための活動へ参加するケースがあります。

事業計画では、

売上。

人件費。

農機具。

だけでなく、その地域で農業を続けられる体制を作れるかまで考える必要があります。

▪️新規事業なら、最初から農地を買う必要があるか考える

例えば会社が新規事業として農業へ参入するとします。

候補農地を1,000万円で購入できるとしても、事業開始時には、

・農地購入費

・農機具

・設備

・人件費

・苗や肥料等

・運転資金

が必要になります。

農地まで所有すると、最初の投資額がさらに大きくなります。

一方、リースなら土地購入費を抑えて営農へ資金を回せる場合があります。

まず借りる。

収穫量や販売先を確認する。

農業事業を継続できると判断する。

必要なら将来の所有を考える。

という進め方もできます。

農地所有をゴールにせず、農業事業そのものが成立するかを先に確認する。

企業参入では特に重要です。

▪️「安い農地を会社で買っておく」は農業参入とは違う

農地価格が安いと、

法人で購入しておいて、将来何かに使えばいい。

と考えることがあります。

しかし農地所有適格法人による取得は、農業経営を行うことが前提です。

また最初から、

駐車場。

倉庫。

店舗。

太陽光発電。

など農業以外へ使う目的なら、農地を農地として所有する3条取得とは別に、農地転用の仕組みを確認する必要があります。

つまり、

農業目的で農地を取得すること

と、

安い農地を事業用地として取得すること

は別です。

「法人なら投資目的で農地を持ちやすい」というわけではありません。

詳しくはこちら

▪️転用して事業用地にしたい会社は5条を確認する

例えば会社が農地を購入して、

配送拠点。

資材置場。

店舗。

駐車場。

などとして利用したい場合です。

これは農業参入ではなく、農地を別用途へ転用する計画です。

所有権移転と転用を同時に行うなら、農地法5条による手続きが中心になります。

さらに、

農振農用地区域。

農地区分。

都市計画。

開発許可。

必要面積。

などを確認します。

農地所有適格法人になる必要があるかを検討する前に、そもそも目的が農業なのか、事業用地への転用なのかを整理しましょう。

詳しくはこちら

▪️2025年から農地所有適格法人にも新しい特例制度が始まっている

法人による農地所有制度も固定されたままではありません。

2025年からは「農業経営発展計画制度」が始まっています。

一定の実績がある農地所有適格法人が、食品事業者などとの出資連携によって経営発展へ取り組む場合、国の認定を受けることで議決権要件の特例を利用できる制度です。

2026年3月には初の認定事例も公表されています。

ただし、これは新しく会社を作れば誰でも農地所有要件を緩和できる制度ではありません。

一定の農業経営実績などがある法人が、さらに成長するための制度です。

企業参入については、

「法律が昔のままで法人参入できない」

と考えるより、所有と貸借で現在どの制度を利用できるかを確認することが重要です。

▪️法人は農地を取得した後にも報告が必要

法人は農地を取得・借用できれば終わりではありません。

農地所有適格法人やリース方式で農地を借りている法人には、農地法に基づく事業状況等の報告義務があります。

原則として毎事業年度終了後3か月以内に、農地がある市町村の農業委員会へ報告します。

報告を怠った場合には、30万円以下の過料の対象となることがあります。

そのため企業参入では、

農地を取得する担当者。

営農する担当者。

毎年の行政手続きを行う担当者。

まで決めておいた方が運営しやすくなります。

農地は買った後の管理まで含めて事業計画を作ります。

▪️法人で農業参入するなら最初に比較したい3つの方法

農業参入を考える会社は、最初から一つの形へ決めず比較します。

① 農地所有適格法人として所有する

農業を主力事業として長期的に経営し、農地そのものを保有したい場合。

② 一般法人として農地を借りる

既存事業を残したまま農業へ参入し、まず事業性を確認したい場合。

③ 農業法人を別会社として設立する

既存会社と農業事業の収支・人員・出資関係を分けたい場合。

どれが良いかは、

農業を本業にするのか。

既存事業と組み合わせるのか。

どこまで投資するのか。

で変わります。

特に新規参入なら、土地を所有するメリットが購入資金を上回るのかを数字で確認しましょう。

▪️農地を所有している側にも「企業へ貸す」という出口がある

ここまでは農業へ参入する企業側から見てきました。

一方、相続した農地などを持つ所有者にとっても、一般法人のリース参入は一つの選択肢になります。

農地を使ってくれる個人農家が近くにいなくても、

農業法人。

農地へ参入する一般企業。

などが借り手になる可能性があります。

もちろん、どの農地でも必ず法人が借りてくれるわけではありません。

面積。

まとまり。

進入路。

水利。

地域の営農条件。

などによって事業性は変わります。

それでも、

「農家しか借りられないから誰もいない」

と決めつけず、農地バンクなども含めて次の利用者を探すことができます。

詳しくはこちら

〖PR〗使っていない農地や土地について、農業利用だけでなく将来の土地活用まで比較したい場合は、複数の活用案を確認する方法もあります。

▪️所有・貸借を決める前に確認したい5項目

法人で農業へ参入するなら、次を先に整理します。

・農業を本業にするのか新規事業にするのか

・農地を所有する必要があるのか

・農業へ実際に従事する責任者を置けるか

・地域で継続して営農できる体制があるか

・土地代を含めて事業収支が成立するか

この5つを整理すると、

農地所有適格法人を目指す。

一般法人として借りる。

まだ参入しない。

という判断がしやすくなります。

農地価格が安いから農業へ参入するのではなく、農業事業が成立するから必要な農地を確保するという順番が重要です。

〖PR〗所有している農地について、貸す・転用する・売るのどれが合理的か迷っている場合は、現在の売却可能性も確認して比較できます。

▪️よくある質問|法人の農地取得と企業参入

Q.普通の株式会社でも農地を買えますか?

非公開会社である株式会社などが、事業・議決権・役員を含む農地所有適格法人の要件を満たせば農地を所有できる可能性があります。

単に会社であるだけでは農地を所有できません。

Q.合同会社でも農地所有適格法人になれますか?

合同会社は対象となる法人形態の一つです。

ただし農業売上、議決権、役員などその他の要件も満たす必要があります。

Q.農地所有適格法人でなければ農業へ参入できませんか?

いいえ。

一般法人でも、一定の条件を満たして農地を借りる方法で農業へ参入できます。

Q.本業が建設業や食品販売業でも農地を借りられますか?

一般法人による貸借では、本業が農業以外であることだけを理由に参入できない仕組みではありません。

実際の営農計画や地域での役割、農業へ従事する責任者などを確認します。

▪️まとめ|企業参入は「農地を買えるか」から考えない

法人による農業参入について、

企業は農地を持てない。

最近はどんな会社でも農地を買える。

どちらも正確ではありません。

現在の制度では、大きく二つに分けられます。

農地を所有する

農地所有適格法人として、

・法人形態

・農業中心の事業

・農業関係者による議決権

・役員等の農業従事

という要件を満たします。

農地を借りる

一般法人でも一定の要件を満たせば、農地を借りて全国で農業へ参入できます。

実際、リース方式で参入する一般法人は2025年1月時点で5,000法人を超えています。

だから企業が新しく農業を始めるなら、

最初に農地を買う。

ではありません。

農業事業を設計する。

営農する地域を決める。

必要な農地を探す。

所有と貸借を比較する。

その順番です。

農業を主力事業として長期的に農地を持つなら、農地所有適格法人を検討する。

既存事業を維持しながら新規参入するなら、リースから始める方法を比較する。

「農業をすること」と「農地を所有すること」を切り離して考える。

これが、法人による農業参入を現在の制度で理解する一番重要なポイントです。

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