不動産投資で利益が出ても現金が残らない理由|決算書から読み解く大家の資金繰り

更新日:9月30日
不動産投資では、決算書が黒字なのに銀行口座の現金が増えていないことがあります。原因は、会計上の利益と実際の現金増減が同じではないからです。
元金返済、設備投資、納税、敷金精算、未収家賃など、損益計算書だけでは見えにくい資金移動を確認すると、利益がどこへ消えたか整理できます。
▪️1 元金返済は経費ではないが現金は減る
ローン返済のうち利息は費用になりますが、元金返済は借入金を減らす処理です。
そのため黒字でも元金返済が大きいと現金は増えにくくなります。
年間元金返済額を別に確認します。
▪️2 減価償却は現金支出と時期がずれる
減価償却費は取得した建物や設備の費用を複数年に配分する会計処理です。
当期に減価償却費を計上しても、その年に同額の現金を支払うわけではありません。
利益と現金の差を理解するために重要な項目です。
▪️3 大規模修繕・設備投資で現金が減る
修繕内容によっては当期費用ではなく資産計上となる場合があります。
現金は支払っているのに損益計算書へ全額費用として出ないため、黒字でも口座残高が減ることがあります。
税務上の区分は工事内容ごとに確認します。
▪️4 税金の支払い時期もずれる
法人税等や所得税は決算・申告後に支払うため、利益が出た期の後に現金流出が発生します。
固定資産税や消費税など他の税負担も資金繰りへ影響します。
決算時点の現金を全部投資へ回さず納税資金を残します。
▪️5 未収家賃や敷金も確認する
売上として家賃を計上していても、実際に入金されていなければ現金は増えません。
敷金など預り金は自分の利益とは別に管理します。
入金明細と会計帳簿を定期的に照合します。
▪️6 資金繰り表で利益と現金をつなぐ
月ごとに家賃入金、運営費、税金、修繕、元金返済を並べると現金増減が分かります。
金融庁も事業性融資で将来キャッシュフローを踏まえた返済可能性を重視しています。
利益だけでなく最低現金残高を管理します。
法人全体では黒字でも、特定物件が現金を使い続けている場合があります。物件別の資金繰りも確認します。
売却益で一時的に現金が増えた年は、通常の賃貸収支と分けて翌期の資金計画を作ります。
家賃収入が帳簿上計上されていても、管理会社からの送金が翌月になる場合があります。売上計上時期と実際の入金時期を把握します。
敷金や保証金は将来返還が必要になる可能性がある預り金です。口座に残っていても自由に使える利益と同じに扱わないようにします。
修繕費をクレジットや未払金で処理した場合は、費用計上と現金支払い時期がずれることがあります。翌月以降の支払い予定も資金繰りへ入れます。
物件を購入した年は諸費用や初期修繕で現金が大きく減ります。利益が出ている既存物件の現金を新規取得へ使った結果、全体残高が減ることもあります。
売却した年は売却代金で現金が増えても、ローン完済や税金支払いが後から発生します。入金額をそのまま利益・余剰資金と考えません。
法人と個人の資金を行き来させる場合は、役員借入金や役員貸付金など会計処理が必要になることがあります。名義ごとの現金を分けて管理します。
月次で現金が減り続けている場合は、家賃、返済、修繕、管理費のどこに原因があるか物件別に分解します。全体黒字でも赤字物件を見落とさないようにします。
黒字を維持するため必要修繕を遅らせると、将来もっと大きな支出になることがあります。利益より建物維持を優先すべき支出は適切な時期に行います。
資金繰り表には最低現金残高の目標を置きます。税金や修繕が重なる月でも下回らない水準を決めると投資判断がしやすくなります。
次の購入前には、購入後12か月の資金繰りを作ります。決算書が黒字でも、購入後の現金が不足するなら時期や融資条件を見直します。
減価償却が終了した物件では会計上の利益が増え、税負担が上がる一方、元金返済は続く場合があります。物件の築年数と償却期間を確認します。
借り換えで毎月返済が下がれば現金は残りやすくなりますが、返済期間が延びて残債が減りにくくなることがあります。短期資金繰りと長期残債を分けて見ます。
空室が発生すると家賃入金が減る一方、ローン返済や固定費は続きます。損益計算書だけでなく月ごとの最低現金残高を管理します。
毎月の手残りを使い切らず、一定割合を修繕・納税口座へ移す運用にすると、黒字なのに支払時期に現金が足りない状態を避けやすくなります。
法人の現金が減っている場合は、役員貸付金や関連会社への資金移動も確認します。本業で稼いだ現金が別用途へ流れていないかを見ます。
家賃入金の管理会社送金日が月末近くなら、帳簿上の売上と口座残高のタイミングがずれます。月次比較では同じ締め日を使います。
利益が出ているのに現金が増えない状態が続くなら、物件取得のペースを落とす選択肢もあります。新規購入より既存物件の資金余力回復を優先します。
融資担当者へは、利益だけでなく現金が増減した理由を説明します。購入、修繕、元金返済など一時的な支出を資料で示します。
利益が大きい月と現金が増える月が一致しない場合は、売掛・未払・借入返済のタイミングを確認します。月次試算表と銀行口座を同じ期間で比べます。
法人では減価償却前利益、営業利益、経常利益など複数の利益指標があります。どの利益を見ているかを区別し、現金との関係を確認します。
修繕を資産計上した年は損益上の費用が小さくても現金支出は大きくなります。設備投資一覧を別に作ると資金流出を把握しやすくなります。
資金繰りが厳しいときは、物件売却、借り換え、修繕時期の調整など選択肢を比較します。黒字という理由だけで現金不足を放置しないことが重要です。
▪️7 確認する順番
確認は、①会計上の利益、②元金返済、③減価償却、④設備投資・修繕、⑤税金、⑥未収家賃・預り金、⑦期首と期末の現預金差、の順で進めます。利益と現金を同じ数字として扱わないことが重要です。
まず年間元金返済額を確認します。黒字でも返済へ現金を多く使っている場合があります。
次に設備投資と納税を確認します。損益計算書へ全部出ない現金支出を拾います。
最後に月次資金繰り表で最低残高を確認します。修繕や空室が重なっても返済できる余力を残します。
▪️⑧ Q&A
Q. 黒字なのに現金が減るのはおかしいですか?
おかしくありません。元金返済や設備投資など、利益計算と別に現金が減る項目があります。
Q. 減価償却が多いと現金は増えますか?
減価償却自体が現金を増やすわけではありません。税負担や会計利益へ影響するため、実際の入出金と分けて確認します。
Q. 何を見れば資金繰りが分かりますか?
家賃入金、経費、税金、修繕、元金返済、期末現預金を月次で並べます。
▪️⑨ まとめ
不動産投資では、会計利益が出ても元金返済や設備投資、納税で現金が残らないことがあります。
損益計算書だけでなく、資金繰り表と現預金残高を確認して経営余力を把握します。

