居抜きで店舗を貸すべき?残置設備・修繕責任・原状回復の判断順

更新日:10月11日
「前のテナントが厨房やカウンターを残して出ていった。これ、次の借主にそのまま貸してもいいんかな……?」
店舗が空いたとき、設備を残した方が早く決まりそうに感じるかもしれません。でも、その設備は誰の物なのか、故障したら誰が直すのか。ここを曖昧にすると、次の賃貸契約でもめるおそれがあります。居抜きで貸すかどうかは、設備の整理から考えましょう。
① 『残っている設備』と『貸せる設備』は違う
内装や厨房が残っている店舗を居抜きで募集する方法はあります。ただし、以前の借主が置いていった設備でも、貸主に所有権が移っているとは限りません。
前借主の賃貸借契約や造作の取り決め、退去時の合意書を確認しましょう。処分を急ぐ前に、誰の物で、誰が撤去を決められるのかを整理します。
今日できることは、店内に残る設備を写真に撮り、設置者や所有者が分かるものから一覧にすること。まだ募集方法を決めなくても、この作業なら進められます。
② 居抜き募集が向くのはどんな店舗?
前の借主と次の借主の業種が近ければ、厨房や内装を利用できる可能性があります。ただし設備の年式・状態や行政上の営業許可などは、次の借主が確認する必要があります。
飲食店から別の飲食店へ引き継ぐ場合でも、調理方法や排気・排水の必要条件が変われば設備工事が必要になることがあります。残せば必ず入居が決まるとは限りません。
物件の周辺需要と、どんな業種の募集に向くかを管理会社や仲介会社へ確認しましょう。設備が多いほど借主の選択肢が広がるとは限りません。
③ 故障した設備は誰が直すのか確認する
エアコンや厨房設備が動かなくなったとき、貸主が修理するのか、借主が維持管理するのか。契約前に整理しないとトラブルになりやすい部分です。
『残置物だから一切責任を負わない』と書けば全て解決するとは限りません。所有権と修繕の取り決め、設備の状態、契約上の説明が整合するか確認が必要です。
給排水や電気・換気など建物側の設備と、移動できる調理機器も区別します。必要なら専門家の点検を入れ、説明できる状態にしましょう。
④ 造作譲渡と原状回復は別の契約条件
内装や設備を次の借主へ譲る場合、何を誰から誰へ譲渡するか、対価があるか、引渡し後の故障をどう扱うかなどの確認が必要です。
前借主が退去するときの原状回復義務と、次の借主が契約するときの設備条件は、同じ話ではありません。前の契約で撤去が必要だった設備を、貸主の合意なしに次の借主へ押し付けることは避けましょう。
造作譲渡や設備残しを検討するなら、設備一覧・写真と、関係者の合意を書面で整えておく方法があります。契約の内容に不安があれば専門家へ確認しましょう。
⑤ 居抜きとスケルトンの費用を比べる
例えば設備を残す場合の点検・修繕が40万円、スケルトンへ戻す撤去費が120万円なら、初期の支出差は80万円です。ただしこれは比較のための仮定で、店舗の工事相場ではありません。
居抜きで募集しても設備が借主の業種に合わず、入居まで時間が掛かる場合があります。一方、スケルトンは借主の自由度が高くても工事に費用と時間が必要になることがあります。
工事費だけでなく、募集期間中の賃料収入・管理費と、次の借主が必要とする設備を並べて判断しましょう。
⑥ 募集を始める前に仲介会社へ伝えること
居抜き募集を相談するときは、店内の写真、設備の所有関係、修理履歴、残す範囲、希望する業種を伝えましょう。資料がない設備は『確認できていない』と示すことが重要です。
借主側が工事する場合も、貸主の承諾や法令・建物の設備条件が関わります。契約後に追加の撤去・修繕費が発生しないよう、工事できる範囲を確認しましょう。
設備を全て残すか撤去するか決める前でも、居抜きとスケルトンそれぞれで募集できる条件を仲介会社へ尋ねることはできます。状況に合わせて比較しましょう。
⑦ 居抜きで貸すか決める四つの順番
第一に厨房・空調・内装・配管の一覧を作り、所有者と設備の状態を確認します。
第二に前借主の原状回復や造作の合意を確認し、残す設備の修繕責任を整理します。
第三に居抜き募集とスケルトン募集の需要・撤去費・想定空室期間を比べます。
最後に次の賃貸借契約で設備の扱いと工事承諾、退去時の返却条件を明確にしましょう。
⑧ よくある質問
Q1. 前のテナントが残した厨房を次の借主に使わせていい?
誰の所有か、設備が安全に使えるか、前の賃貸借契約と退去時の合意がどうなっているかによります。
設備一覧と契約資料を確認してから条件を決めましょう。
Q2. 居抜きで募集すれば空室期間は必ず短くなる?
次の借主の業種や設備の状態、周辺の需要によって変わります。
居抜きとスケルトンの募集条件を仲介会社へ相談して比べましょう。
Q3. 残置物と書けば設備修理の責任は全てなくなる?
名称だけで責任が一律に決まるわけではありません。所有権や契約上の説明、設備の状態を整理する必要があります。
貸主・借主が理解できる設備条件を書面で確認しましょう。
⑨ まとめ
店舗を居抜きで貸すなら、設備が残っていることより、誰の物で誰が維持・修理するかを確認することが重要です。
居抜きとスケルトンは工事費と募集条件が異なります。前借主の原状回復と次の契約を区別し、費用と期間を比べて判断しましょう。

