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賃貸退去の原状回復はどこまで大家負担?クロス・床・設備の線引きを具体例で解説

  • 執筆者の写真: MIRAIU
    MIRAIU
  • 2025年12月6日
  • 読了時間: 20分

更新日:1 日前

入居者が退去した。

管理会社から原状回復の見積もりが届いた。

クロス張り替え。

床補修。

ハウスクリーニング。

鍵交換。

エアコンクリーニング。

合計25万円。

そこで大家として、

「これ、どこまで自分が払うん?」

「入居者が住んで汚れたんやから借主負担ちゃうん?」

「クロスは6年経ったら全部大家負担?」

と迷うことがあります。

結論からいうと、賃貸住宅の原状回復は、

退去時に古くなっているものを全部新品へ戻す制度ではありません。

民法621条では、賃借人が原状回復する対象から、通常の使用・収益によって生じた損耗と経年変化を除いています。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」でも、

通常の生活で発生する損耗・経年変化。

と、

借主の故意・過失、手入れ不足、通常の使用を超える使い方で生じた損傷。

を分ける考え方が基本です。

ただし実際の退去精算は、

「大家負担か借主負担か」だけでは決まりません。

クロスなら経過年数。

床なら補修範囲。

クリーニングなら普段の清掃状況や特約。

鍵なら交換理由。

設備なら故障原因。

まで確認する必要があります。

この記事では、大家側から見た原状回復の線引きを、部位ごとに整理します。

空き家・築古賃貸・不動産活用全体はこちらです。

賃貸管理全体の入口はこちらです。

※本記事には広告・PRを含みます。

▪️結論|まず「普通に住んでも発生したか?」を考える

例えば5年間入居した部屋があります。

クロスが日焼けしている。

家具を置いていた場所に跡がある。

畳の色が変わっている。

こうしたものは、普通に生活していても発生する可能性があります。

一方、

子どもが壁へ落書きした。

ペットが柱を大きく傷つけた。

引越し作業で床へ深い傷を付けた。

結露を長期間放置して壁を腐食させた。

という場合は事情が違います。

つまり最初の線引きは、

その入居者でなくても普通に住んでいれば発生したか。

です。

普通に住んでも発生するものなら、大家側で考える部分が大きい。

入居者の使い方によって余計に発生・拡大したものなら、借主負担を検討します。

ただし借主側に原因があっても、クロスなどでは経過年数を考慮する場合があります。

ここからが原状回復の本当の線引きです。

▪️民法621条でも通常損耗・経年変化は原状回復から除かれている

原状回復は国土交通省のガイドラインだけの話ではありません。

2020年4月施行の改正民法では、第621条に賃借人の原状回復義務が明文化されています。

その中で、

通常の使用・収益によって生じた損耗。

経年変化。

は原状回復義務から除かれています。

つまり、

「入居前より古くなった=借主が直す」

という考え方ではありません。

賃貸住宅は、人が住めば少しずつ古くなります。

その通常損耗や経年変化を見込んで大家は家賃を受け取っています。

そのため退去時に、通常使用による劣化まで改めて借主へすべて負担させる考え方にはなりません。

一方で、借主側の責任によって生じた損傷まで大家が全部負担するという意味でもありません。

自然に古くなった部分と、余計に傷めた部分を分ける。

これが基本です。

▪️クロス|日焼けは大家側、落書き・著しいヤニは借主側を検討

原状回復で最も多いのがクロスです。

大家側で考える代表例には、

日照による変色。

テレビ・冷蔵庫等の後ろにできた黒ずみ。

壁に貼ったポスター・絵画の跡。

通常程度の画鋲・ピンの穴。

などがあります。

これらは通常の住まい方でも発生すると考えられるものです。

一方、

落書き。

下地ボードの交換が必要になる程度の釘・ネジ穴。

借主の手入れ不足によって拡大したカビ・シミ。

喫煙によってクロス全体へ著しい変色・臭いが付着した状態。

などでは借主負担を検討します。

ここで重要なのが、

原因だけでなく交換範囲を見ること。

例えばクロスの一部を傷つけたからといって、物件全部のクロス張り替え費を当然に借主へ請求する考え方ではありません。

国土交通省ガイドラインでは、クロスは㎡単位での負担が望ましいとしつつ、損傷箇所を含む一面分程度までを負担範囲とする考え方が示されています。

「部屋全部を新品にしたい」

という大家側の希望と、

「借主が負担すべき範囲」

は分けます。

▪️クロスの「6年」は寿命切れの日ではない

原状回復で有名なのが、

クロス6年

です。

国土交通省ガイドラインでは、壁クロスについて6年で残存価値が1円になるように借主負担割合を考える方法が示されています。

例えば新品時から1年で借主が大きく汚したケースと、5年経過後に同じ汚れを付けたケース。

同じ張り替え費でも、経過年数を考えれば借主負担割合は同じとは限りません。

しかし、

6年経過したら借主が何をしても0円。

という意味ではありません。

例えば長年使ったクロスへ故意に落書きをし、それを消すための作業費などが発生する場合まで、すべて負担がなくなるとは限りません。

また清掃費など、クロスそのものの残存価値とは違う費用もあります。

だから大家側も、

「6年以上だから全部諦める」

「2年だから全部借主」

と機械的に計算しません。

原因・交換範囲・経過年数。

この3つを合わせます。

▪️家具の跡・床のへこみ|普通に家具を置いただけなら大家側

退去後に家具がなくなると、

ベッド。

タンス。

ソファ。

テーブル。

などを置いていた部分にへこみ・跡が残ることがあります。

大家から見ると、

「床がへこんでるやん」

と思います。

しかし国土交通省ガイドラインでは、家具の設置による床・カーペットのへこみや設置跡は、通常の生活で発生すると考えられる例に挙げられています。

賃貸住宅で家具を置くこと自体は普通だからです。

一方、

引越し作業で家具を引きずり深い傷を付けた。

キャスター等によって著しく床を傷つけた。

冷蔵庫下のサビを長期間放置して床まで損傷した。

というケースでは、借主側の使用・管理が関係する可能性があります。

同じ床の傷でも、

家具が置いてあった跡なのか。

不注意で傷を付けたのか。

を分けます。

▪️フローリングはクロスと同じ「6年」ではない

ここは旧記事では説明できていなかった部分です。

クロスが6年だから、

「床も6年で価値ゼロ」

と考えるのは違います。

国土交通省ガイドラインでは、フローリングの部分補修については原則として経過年数を考慮しない整理になっています。

例えば借主が一部分へ大きな傷を付け、

その部分だけ補修する。

なら、クロスのように単純な6年按分とは違います。

一方でフローリング全体に損傷が広がり、全面張り替えとなる場合には、建物の耐用年数を使って経過年数を考える方法が示されています。

つまり、

クロスも床も設備も全部「耐用年数で同じように按分」

ではありません。

部材ごとに考え方が違います。

原状回復見積もりで、

「床張り替え一式15万円」

と書かれていたら、

部分補修できないのか。

なぜ全面交換なのか。

まで確認します。

▪️カーペット・クッションフロアは6年基準が関係する

フローリングとは違い、

カーペット。

クッションフロア。

については、国土交通省ガイドラインで6年で残存価値1円となるよう借主負担割合を考える方法が示されています。

例えばクッションフロアを借主の不注意で損傷した場合でも、

新品から半年。

と、

5年半経過。

では負担の考え方が変わります。

また損傷箇所が複数ある場合には、居室全体が施工単位になることもあります。

ただし、

施工会社が全面交換する。

ことと、

その工事費を全部借主が負担する。

ことは同じではありません。

ここを見積書で分けます。

▪️畳|日焼け・変色と借主が傷めた畳を分ける

築古戸建や和室では畳もよく問題になります。

普通に生活し、日照などによって畳が変色した。

次の入居者を迎えるために畳表をきれいにしたい。

このような交換・表替えは、大家側の商品化として行う部分があります。

一方、

借主が物を落として大きく傷つけた。

飲み物などをこぼして放置し損傷した。

といった場合には借主負担を検討します。

国土交通省ガイドラインでは、借主が損傷させた畳については原則1枚単位で負担する考え方です。

さらに畳表については、クロスのような経過年数による負担割合を採用していません。

クロス6年のルールを畳へそのまま当てはめない。

ここも大家側で知っておきたい違いです。

▪️画鋲とネジ穴|「穴がある」だけでは同じ扱いにならない

壁に穴があると、

「借主が開けたんだから借主負担」

と思いやすくなります。

しかし穴の大きさ・目的で考え方が変わります。

国土交通省ガイドラインでは、

ポスター等を貼るための画鋲・ピンなどで、下地ボードの張り替えまで必要ない程度の穴。

は通常使用側の例です。

一方、

重量物を掛けるために大きな釘・ネジを使用し、下地ボードまで交換する必要がある。

という場合は借主負担側の例として整理されています。

つまり、

穴が何個あるかだけではありません。

補修で済むのか。

下地交換まで必要なのか。

を確認します。

▪️タバコ|一部分の汚れと居室全体のヤニ・臭いを分ける

喫煙物件の退去では、

クロス。

天井。

建具。

エアコン。

などへ臭い・ヤニが残ることがあります。

国土交通省ガイドラインでは、喫煙等によって居室全体のクロス等がヤニで変色したり、臭いが付着した場合には、居室全体のクリーニングやクロス張り替えを借主負担とすることが妥当と考えられるケースを示しています。

ただしここでも、

工事費100%。

とは自動的になりません。

クロス張り替え部分なら経過年数を考慮します。

一方で臭い除去のための清掃費など、別の費用も考えられます。

つまり、

タバコ=全面張り替え全額請求

と一行で処理しないことです。

▪️ペット|「ペット可」でも傷・臭いまで通常損耗になるとは限らない

ペット可物件では、

「ペットを飼っていい契約だから、傷も全部大家負担?」

という疑問があります。

ペット飼育を認めていることと、

柱やクロスを著しく傷つけても借主負担にならないこと。

は別です。

例えば、

柱への大きな爪傷。

クロスの破損。

強い尿臭。

などが残っている場合には、借主負担を検討します。

またペット可物件では、

敷金追加。

退去時清掃。

消臭。

などについて特約が設定されている場合があります。

まず賃貸借契約書を確認します。

ただし特約があるから何でも無条件に借主負担になるとは限らないため、内容・説明・負担範囲も確認します。

▪️結露・カビ|カビがあるだけで借主負担にはしない

結露・カビはトラブルになりやすい部分です。

例えば、

建物そのものが結露しやすい。

漏水していた。

換気設備が故障していた。

など貸主側の建物条件が原因なら、単純に借主の責任とは言えません。

一方、

結露が発生していた。

借主が貸主へ知らせない。

拭き取り・換気などもしない。

カビ・シミが拡大。

壁まで腐食。

という場合には、借主の手入れ不足が負担判断へ関係する可能性があります。

だから、

カビ=借主。

でも、

結露=建物のせい。

でもありません。

原因と、発生後の対応を分けます。

退去後に汚れを見つけたときの確認はこちらで詳しく整理しています。

▪️ハウスクリーニング|通常清掃していれば大家側が基本

退去精算でよくあるのが、

「ハウスクリーニング一式4万円」

です。

国土交通省ガイドラインでは、借主が通常の清掃を実施している場合に、次の入居者を確保するため貸主が専門業者へ依頼する全体ハウスクリーニングは、貸主側で考える例になっています。

一方、

借主が通常の清掃を行っていない。

キッチン油汚れを長期間放置している。

通常以上の清掃が必要。

という場合には、借主側へ清掃費を求めることが考えられます。

つまり、

退去したからハウスクリーニング費は自動的に借主。

でも、

クリーニングは必ず大家。

でもありません。

さらに契約書に退去時クリーニング特約がある場合は、その内容も確認します。

▪️クリーニング特約は契約書に書いてあれば何でも有効とは限らない

賃貸借契約には、

退去時クリーニング費3万3,000円。

エアコンクリーニング費1万1,000円。

などの特約が入っている場合があります。

国土交通省も、鍵交換費・ルームクリーニング費などの特約について契約前に確認するよう案内しています。

ただし特約は、

契約書に一文入っている。

というだけで、どのような内容でも当然に有効になるというものではありません。

借主が負担する内容・範囲を認識できていたか。

負担内容が明確か。

金額が妥当か。

などが問題になる場合があります。

大家側でも、

「特約あるから全額引いといて」

だけで管理会社へ任せず、実際の契約書を確認します。

▪️鍵交換|次の入居者のための交換と紛失による交換は違う

鍵交換も理由で分けます。

退去者は鍵をすべて返却した。

しかし防犯上、次の入居者のために大家がシリンダーを交換する。

この費用と、

借主が鍵を紛失したためシリンダー交換が必要になった。

という費用は同じではありません。

国土交通省ガイドラインでは、鍵を紛失した場合のシリンダー交換費は借主負担とする考え方が示されています。

しかも鍵紛失の場合については、経過年数を考慮しない整理です。

一方、

次の入居者確保・防犯のため貸主判断で通常交換する。

なら借主の損傷とは別です。

交換した事実ではなく、なぜ交換したか。

を確認します。

▪️エアコン・給湯器・設備|古くなって壊れたなら原状回復とは別

退去確認をすると、

エアコンが動かない。

給湯器が古い。

換気扇の音が大きい。

インターホンが故障。

という設備不良が見つかることがあります。

しかし、

10年以上使って自然に故障した設備。

と、

借主が故意・過失で壊した設備。

は別です。

通常使用・経年劣化による設備交換なら、原則として大家側の修繕問題です。

借主側に原因があるなら負担を検討します。

さらに設備機器については、それぞれの耐用年数等を踏まえた負担割合を考える場合があります。

つまり、

退去時に壊れていた=借主負担

ではありません。

築古物件で設備修繕が複数重なる場合はこちらも確認できます。

▪️「借主負担」と「工事範囲」を別々に確認する

例えばクロスの一面に借主側の損傷がある。

管理会社から、

「色が合わないので部屋全部張り替えます」

と言われた。

工事として部屋全部を張り替える必要があることと、

その工事費全部を借主へ負担してもらえること

は同じではありません。

大家側が、

次の募集のため部屋全体をきれいにしたい。

別のクロスへ変更したい。

設備も一緒に新しくしたい。

という部分は、原状回復とは別の投資になります。

だから見積書では、

原状回復。

通常修繕。

募集用リフォーム。

を分けて見ます。

原状回復見積もり自体の確認方法はこちらです。

▪️原状回復とリフォームを混ぜると「誰が払うか」が分からなくなる

例えば退去後、

クロス汚れ補修。

床傷補修。

古い洗面台交換。

アクセントクロス施工。

温水洗浄便座新設。

をまとめて40万円で発注した。

この状態で、

「原状回復40万円かかった」

としてしまうと収支が見えにくくなります。

実際には、

借主損傷の復旧。

大家側の経年修繕。

次回募集のための設備投資。

が混ざっています。

原状回復費が高いのか。

リフォームへお金を使ったのか。

を分けるためにも、見積書の項目分けが重要です。

▪️大家負担でも「やらなくていい」という意味ではない

例えばクロスの日焼けが大家負担だった。

だから、

「借主から取れんのなら、そのままでいい」

とは限りません。

内見した人が、

部屋が暗い。

古く見える。

清潔感がない。

と感じれば空室期間へ影響する可能性があります。

つまり、

費用負担の線引き。

と、

次の入居募集でどこまで直すか。

は別の判断です。

借主負担にならない工事でも、家賃・募集力・工事費を比較して実施した方がよい場合があります。

反対に、

古い設備を全部新品へ交換したから家賃が大きく上がる。

とも限りません。

必要なところへ絞って投資します。

〖PR〗退去後にクロス・床・水回り・設備など複数箇所を直す必要があり、原状回復だけにするか次回募集を意識してまとめてリフォームするか迷う場合は、工事内容と費用を比較してから決める方法があります。

▪️管理会社へ任せても「一式○万円」だけで承認しない

大家が退去立会いへ行けない場合、原状回復は管理会社へ任せることが多くなります。

それ自体は問題ありません。

ただし、

原状回復 一式25万円。

だけで承認するのではなく、

どの場所が損傷しているのか。

借主負担と大家負担をどう分けたか。

交換範囲はどこか。

写真はあるか。

入居年数は何年か。

契約特約はどうなっているか。

を確認します。

特に築古物件では、もともと古かった設備まで退去工事へ混ざると金額が大きくなります。

管理会社へ実務を任せても、

負担区分と工事理由は大家が把握する。

この形が安全です。

▪️退去時に一度だけ確認する7項目

原状回復見積もりが来たら、一度だけ次を確認します。

・入居時と退去時の写真を比較したか

・通常損耗・経年変化か、借主側の原因か

・借主側の原因なら損傷箇所と補修範囲はどこか

・クロス・床・設備で経過年数の扱いが違うことを確認したか

・クリーニング・鍵交換は発生理由と特約を確認したか

・原状回復と次回募集用リフォームを分けたか

・見積書が「一式」ではなく内容を確認できる状態か

ここまで確認してから、

借主へいくら請求するか。

大家がいくら負担するか。

次の募集へいくら追加投資するか。

を決めます。

退去精算は「誰が悪いか」を決める作業ではありません。

どの費用を誰が負担するのが妥当かを整理する作業です。

▪️入居時写真がないと「いつできた傷か」で揉めやすい

退去後に、

「これは入居前からありました」

と借主。

「そんな傷はなかった」

と大家。

こうなると確認が難しくなります。

国土交通省も、入居時・退去時の状態を双方で確認し、チェックリストや写真を残すことが原状回復トラブル防止に有効としています。

だから次の入居者からは、

床。

クロス。

建具。

キッチン。

浴室。

トイレ。

設備。

などを入居前に撮影して保存します。

退去時に大家自身が立ち会えなくても、管理会社へ同じ位置から写真を撮ってもらえば比較しやすくなります。

原状回復の勝負は、実は退去日ではなく入居日に始まっています。

▪️原状回復費が毎回大きいなら物件全体の収支を見る

築古アパートで、

1室退去するたび20万円。

次は30万円。

さらに給湯器交換。

エアコン交換。

空室期間も2か月。

となっている。

この場合は、

「今回の借主へ何万円請求できるか」

だけ見ても賃貸経営は改善しません。

年間家賃。

空室損失。

年間修繕費。

管理費。

ローン返済。

今後の大型修繕。

まで含めて判断します。

例えば原状回復を5万円削減できても、工事判断が遅れて1か月空室が伸びれば、それ以上の家賃を失うこともあります。

だから原状回復は正しく精算しつつ、募集再開を必要以上に遅らせないことも重要です。

〖PR〗築古物件で退去のたびに修繕費が大きくなり、家賃収入に対してどの程度まで工事費をかけてよいか分からなくなっている場合は、原状回復単体ではなく物件全体の収支から整理する方法があります。

▪️よくある質問|原状回復の大家負担・借主負担

Q.経年劣化なら必ず大家負担ですか?

通常の使用による損耗・経年変化は、原則として借主の原状回復義務から除かれます。

ただし契約特約がある場合は、その内容・有効性を含めて個別に確認します。

Q.クロスは6年経ったら借主へ何も請求できませんか?

6年はクロスの残存価値を考える際の基準です。

6年経過しただけで、故意・過失による損傷に関係するすべての費用が必ず0円になるという意味ではありません。

Q.家具で床がへこんだら借主負担ですか?

通常の家具設置による床・カーペットのへこみや設置跡は、通常使用側の例として国土交通省ガイドラインに示されています。

一方、不注意で付けた大きな傷などは別に考えます。

Q.画鋲の穴は請求できますか?

下地ボードの交換が不要な程度の通常の画鋲・ピン穴は通常使用側の例です。

重量物用のネジなどで下地交換が必要な損傷なら借主負担を検討します。

Q.退去時のハウスクリーニングは誰が払いますか?

通常の清掃を借主が行っている場合、次の入居者のために貸主が行う専門業者の清掃は貸主側で考えるのが基本です。

ただし借主が通常清掃を怠っている場合や、有効なクリーニング特約がある場合などは別に確認します。

Q.鍵交換は借主負担ですか?

鍵を紛失したことによるシリンダー交換は借主負担を検討します。

次の入居者のため貸主判断で通常交換する場合とは分けます。

Q.管理会社が借主負担と判断したら、そのまま請求して大丈夫ですか?

管理会社へ実務を任せる場合でも、写真・契約書・損傷原因・経過年数・補修範囲などを確認した方がよいでしょう。

原状回復ガイドラインは一般的な基準であり、実際の精算は個別契約・事実関係によって変わります。

▪️まとめ|「大家か借主か」だけでなく原因・範囲・年数まで見る

原状回復で一番危ないのは、

経年劣化だから大家。

傷があるから借主。

クロスは6年。

という3つだけで精算することです。

実際には、

同じクロスでも日焼けと落書きでは違う。

同じ床でも家具跡と引越し傷では違う。

同じカビでも建物原因と放置による拡大では違う。

同じ鍵交換でも通常交換と紛失では違う。

さらに借主側に原因がある場合でも、部材によって経過年数や補修単位の考え方が違います。

そして大家側が次の入居募集のため、

全面クロス交換。

設備更新。

グレードアップ。

を行う部分まで、すべて原状回復として借主へ負担させる話ではありません。

だから退去時には、

原因を確認する。

補修範囲を確認する。

経過年数を確認する。

契約・特約を確認する。

ここまで整理したうえで精算します。

管理会社へ任せる場合も、

「借主○万円、大家○万円」

という最終金額だけを見るのではなく、なぜその区分になったかを確認する。

そして大家負担になった工事は、

次の募集に必要か。

清掃で済むか。

部分補修できるか。

交換した方が家賃・空室対策として合理的か。

まで別に判断します。

原状回復の線引きは、退去した部屋を新品に戻す線ではありません。

通常使用で古くなった部分と、借主の責任で余計に傷んだ部分を分ける線です。

この考え方を持っておけば、退去するたびに管理会社の見積もりを丸のみするのではなく、大家自身で原状回復費を判断しやすくなります。

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