築古木造アパートが節税に活用される理由とは?減価償却の考え方

更新日:10月9日
「築古木造アパートなら短期間で減価償却でき、節税になる」と聞いて物件を探す人がいます。しかし、築年数だけで税金が必ず減るわけではありません。土地と建物の価格の分け方、改修内容、家賃収支、購入者の所得状況によって結果が変わります。
減価償却は不動産投資の現金収支と税務上の所得が違う理由の一つです。木造建物の法定耐用年数と、中古資産に使える場合がある簡便法を理解し、節税額ではなく投資全体の税引後の手残りで判断しましょう。
① 木造住宅用の22年は建物の寿命ではない
一般的な木造の住宅用建物の法定耐用年数は税務上22年とされています。この年数は減価償却の計算に用いるもので、築22年を過ぎたら建物が使えなくなるという意味ではありません。
屋根や給排水、基礎、構造部の状態によって建物の使用可能な期間は変わります。築年数だけで安全性や賃貸に適するかを判断せず、現地の状態を確認しましょう。
建物と設備では税務上の耐用年数が異なる場合があります。購入前に建物本体と設備の内容も整理します。
② 中古の耐用年数は条件付きで簡便法を使う
中古資産を取得して事業に使う場合、取得後に使える期間を合理的に見積もる方法があり、見積もりが難しいときは一定の条件で簡便法を使うことができます。
法定耐用年数を全部経過している場合は「法定耐用年数×20%」が簡便法の一つです。木造住宅用22年なら22×0.2=4.4年で、1年未満を切り捨てた4年という計算になります。
ただし取得後の改良工事などにより簡便法を使えない場合があります。『築22年超なら誰でも必ず4年償却』という説明は避けましょう。
③ 法定耐用年数が残る場合の計算も確認
法定耐用年数を一部経過した中古資産では、簡便法によって「残存年数+経過年数の20%」を基礎に計算する場合があります。1年未満の端数処理や下限の年数にもルールがあります。
例えば築10年の木造住宅用建物なら、22-10+10×20%=14年という計算になります。これは簡便法の説明用であり、個別の物件へ無条件に適用できるわけではありません。
改良工事を行ったときの扱いや事業使用開始の時期などを税理士へ確認し、初年度の償却費を過大に見積もらないようにします。
④ 建物と土地の価格を分けなければならない
土地は原則として減価償却できません。中古アパートの購入総額をすべて建物として短期償却することはできず、土地・建物それぞれの取得価額を合理的な根拠で整理する必要があります。
例えば土地600万円・建物400万円の総額1,000万円で、建物部分を4年で償却できると仮定すると、単純な年間償却額の目安は100万円です。ただし取得月、償却率、取得に含める費用などで実際の計算は変わります。
売買契約書、固定資産税評価資料、建築・設備の状況などを基に、不自然な土地建物の按分をしないことが大切です。
⑤ 減価償却による赤字と現金支出を区別する
減価償却費は税務上の費用になっても、通常その年度に同額の現金が支払われるわけではありません。一方で借入元本の返済は現金支出ですが、通常は必要経費ではありません。
不動産所得が赤字になれば給与所得などとの損益通算が認められる場合があります。ただし土地の取得に要した借入金利子に相当する赤字部分など、損益通算が制限される場合があります。
損益通算ができても税金がいくら減るかは本人の所得、ほかの費用、税率などで異なります。黒字経営より赤字の節税を優先するという考えは慎重にしましょう。
⑥ 償却終了後と売却時の税金まで比較する
減価償却費が大きい期間は課税所得が小さくなる可能性がありますが、償却が終わると同じ家賃でも課税所得が増える場合があります。修繕費の増加と時期が重なる可能性にも注意が必要です。
建物を売却するときは、取得費の計算で保有期間中の減価償却費相当額を差し引くのが原則です。減価償却による当初の税務上の効果だけを見ず、売却時の譲渡所得も検討します。
売却予想額から借入残高、仲介費、税金を差し引き、保有中の税引後キャッシュフローと合わせて判断しましょう。
国税庁の制度確認先
⑦ 築古木造アパート購入前の停止条件
土地・建物の取得価額の配分に根拠がなければ、減価償却費や節税効果を確定したつもりにならないようにします。
中古資産の簡便法を使えるか、改良工事の影響がないか不明なら、取得前に税理士へ確認します。
家賃の成約見込みと建物の修繕費が分からなければ、償却費による節税だけを購入理由にしません。
最後に償却終了後の納税額、借入元本返済、売却時の税金と残債まで試算し、税引後の現金が残る物件か判断しましょう。
⑧ よくある質問
Q1. 築22年超の木造アパートは必ず4年償却?
法定耐用年数を全部経過した中古木造住宅用建物では、簡便法で4年になる計算例があります。
改良工事や取得・利用状況によって適用できない場合があるため、無条件に決めつけられません。
Q2. 土地も建物と同じように減価償却できる?
土地は原則として減価償却の対象ではありません。
購入額を合理的に土地と建物へ分け、建物等の償却対象額を確認します。
Q3. 減価償却で節税できれば良い投資?
節税効果があっても空室や修繕費、借入返済で現金が不足する場合があります。
償却終了後と売却時の税金まで含めて評価しましょう。
⑨ まとめ
築古木造アパートは、一定の条件で短い耐用年数を使って減価償却できる場合があります。しかし22年や4年という数字だけで、節税額や投資成績は決まりません。
土地・建物の取得価額、改良工事、損益通算の制限、税引後の現金収支、売却時の税金を確認し、物件そのものの収益性を優先しましょう。

